April 16, 2009
世界金融危機で水道料金の適正化も困難に
中国ではここ数年、清潔な水の確保が、多くの国民の悩みの種となってきた。今年2月、過去半世紀で最大級の干ばつが中国を襲い、北京に近い河北省と河南省の住民約500万人と家畜約250万頭が水不足に苦しんだ。
上海の北300キロメートルにある江蘇省塩城では、化学工場が排出する有害なフェノール化合物で河川が汚染され、3日間、清潔な水が供給されず、20万人を超える住民に被害が及んだ。
北京オリンピックの開催を間近に控えた昨年6月には、セーリング競技の開催地だった港湾都市の青島で、沿岸に藻が異常発生。原因は水質汚染と見られている。
中国では以前からこうした水にまつわる問題が絶えず、洪水や干ばつで過去何度も重大な被害を受けてきた。しかし、中国が現在抱えている水問題は、これまでで最も深刻だと言えるだろう。
過去30年近く、毎年2ケタ台の経済成長を続け、数億人が農村部から都市部に大移動した中国は、急増する水需要をほとんど満たせていない。もともと水資源が不足していたのに加え、汚染によって水資源の確保がますます困難になっている。
毎年平均で、中国の全農地の13%に当たる1530万ヘクタールの農場が干ばつの被害を受けている。また、中国の全人口13億人のほぼ4分の1に当たる約3億人の地方住民が、安全な飲料水を利用できずにいる。
中国の600以上の都市の中で400都市が水不足に直面しており、そのうちの100都市は特に深刻な状況に陥る可能性があるという。都市住民の水需要を完全に満たすには、年間水道供給量を400億立方メートル増やさなくてはならないくらい、中国は深刻な水供給問題に直面している。
長年にわたる水質汚染
中国が抱える最も大きな問題の1つは、排水問題だ。世界銀行によると、2006年だけでも、約537億トンもの生活排水や汚染水がほとんど下水処理されずに、工場や都市から河川や湖に垂れ流されている。
中国の環境当局は、国内の主要な湖のうち48湖を「重度汚染」に指定している。また、中国の2大河川である長江と黄河の沿岸で水質調査を行った結果、採取した水質サンプルの4分の1で著しい水質汚染が確認され、農業灌漑用水としても不適格であることが判明した。水道水も安全ではなく、中国政府は昨年、48件の大規模な汚染問題で緊急対応に追われた。
中国の人口の多さも水不足問題に拍車をかけている。中国の1人当たりの水源量は世界の平均値のわずか25%ほどに過ぎない。さらに状況を複雑にしているのは、地域により、水源量に大きな格差がある点だ。中国南部は比較的水源が豊富で、年間降水量は2000ミリメートルを超える。一方、人口1700万人の北京や1200万人の天津を擁する中国北部の年間平均降水量は、わずか200〜400ミリメートルに過ぎない。
中国北部の平野部は中国の政治や文化の中心地で、かつ主要な工業地帯、重要な穀倉地帯の1つでもあるのに、降水量は極めて少なく、イスラエルの降水量をも下回っている
中国が水道料金を低く保つため、巨額の補助金を提供してきたことも、水不足の深刻化に拍車をかけている。水道料金の値上がりを抑制してきたことで、節水努力が行われなかったのである。
過去20年間で中国の水道料金は10倍以上に値上がりしてはいるが、それでも世界的な水道料金の水準を大きく下回っており、米国の水道料金の数分の1程度に過ぎない。
無駄に使用される水資源
農業用水は中国の水使用量全体の約65%を占めるが、実際に作物にまで到達している水量はその半分にも満たない。世銀の調査によると、農業用水の半分以上が配水管からの漏洩や蒸発などにより、農地へ届く前に失われている。
工業用水は全水使用量の25%を占めるが、ほとんど再利用されていない。これに対し、先進国の平均では85%の工業用水が再利用されている。
生活用水が全水使用量に占める割合は10%だが、農村部から都市部へ移り住む人口が増え続ければ、この割合はさらに上昇するだろう。
現在、中国政府は公共投資によって状況を打開しようと取り組んでいる。中国環境保護省によると、中国は、昨年9月までに2712件の水質浄化事業に74億6000万ドル(約7400億円)を投じた。
中国南部から北部へ水を引く大規模な巨額事業にも着手したのだが、環境悪化への懸念が強いうえ、水路や送水ポンプ場、浄水場の建設のために移住を求められる推計30万人の農民からの激しい抵抗に遭い、事業は難航している。
水に関係するビジネスを行なっている日系企業も何社か知っているが、もっと大規模に売り込みをかけても良いのではないかと思う。
今がそのチャンスだと言えるのではないだろうか。
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