May 25, 2009

中国のエコ発電ビジネス、
地方政府の経済成長優先で期待外れ


風力発電や太陽電池による太陽光発電など、中国大陸における再生可能エネルギーによる発電事業が注目されているが・・・

上場している5社を含めて中国大陸には太陽光発電装置メーカーが数百社あったが、そのうち2009年に入って倒産した会社は約300社にもおよぶ。しかし、それでも依然50社あまりが過当競争をしている。加えて、中国政府が石炭火力発電を中心とする既存技術で発電した電力料金を低く抑えている政策を続けており、中国メーカーは輸出に活路を見いださざるを得ない、という状況だ。

風力発電に関しては、中国政府の補助政策もあり市場は伸びているが、やはり過当競争が起きており、中国の国内メーカーがシェアを伸ばす一方で、海外から中国市場に参入したメーカーは撤退を余儀なくされている。

中国の環境破壊が進んでいることは事実
最近日本経済センターから出版された『中国成長の壁を越えて』(著者は関志忠氏、朱建栄氏など)は、中国の環境問題に警鐘を鳴らしている。
英BPのレポートでは2007年の中国のエネルギー消費量は石油に換算すると18億6300万トンで世界全体の16.8%を占め、米国に次いで世界第2位に位置している。石炭などの化石燃料への依存度が高く二酸化炭素(CO2)の排出量は急増している。06年の中国のCO2総排出量は56億1000万トンで米国の57億トンに迫っている。最近のオランダ環境調査委員会の発表では、既に世界一の排出国になっている。

中国環境保護部によると、国土の3分の1は酸性雨に侵害され、人口の4分の1は安全レベルに達していない水を飲み、都市人口の3分の1は汚染された空気を吸っている、という。深刻なのは河川、湖や湾岸の海の汚染が拡大している点。特に問題なのは化学工場などの汚水処理だ。揚子江流域だけで1万もの化学工場がある。さらに、三峡ダムや南水北調などの大型プロジェクトによる環境破壊も著しい。

香港も大気汚染によって百万ドルの夜景が見えない日が生ずるなどの被害が出ている。後背地の珠江デルタから汚染された大気が流れてくるだけでなく、珠江そのものが汚染され、それが近隣の海域にも広がりつつあるからだ。金融危機によって珠江デルタの工場閉鎖が続き環境は改善されると期待されていたが、その期待に反して大きな改善は見られていない。

このような状況に、廃油リサイクル、化学廃棄物質処理などが中心の香港の環境産業が中国大陸に進出している。日本でもビジネスチャンスとして環境ビジネスに期待がかかっており中国へのミッション派遣などが盛んであるが、ボランティア事業はあるにせよ直接ビジネスに結びつく案件は少ない。環境対策については「総論賛成」であるが、経済発展を最優先する影になり、「各論反対」であるというのが現実だからだ。

中央政府は一時期、「成長より環境対策を地方政府の評価の基準とする」としていたが、09年のGDP成長率が8%を達成しなければ、雇用創設につながらないというムードとなっているようだ。地方政府は、域内のGDP成長率を8%増とすることが09年の当面の命題であり、環境問題はそれを阻害すると考えているのだろう。

最近、各地で頻発する労働問題や土地問題に関係した抗議騒動は報道されるようになったが、環境汚染による住民運動はあまり表に出てきていない。内陸部では地域開発、沿海部では輸出産業の建て直しが優先され、環境汚染事故が起きたとしても、地方政府はこれらを隠してしまうのだろう。地方政府は、既存産業の保護と産業構造の転換の方向性が決まるまでは、従来通りの企業誘致と外資の導入を続けざるをえない。最近も、沿海部各都市の訪問団が東京など日本各地で企業誘致セミナーを盛んに行っているのが現実だ。


輸出頼みの中国の太陽光発電産業
中国の国内の太陽光発電市場は小さく、全世界の太陽光発電量の1%にも満たない。過去には、中国中央政府が太陽光発電所を建設する、といううわさがあったが実現していない。中国国内で太陽光発電装置市場を創出するためには、政府の補助金政策が不可欠である。中国では電力料金も政府が決定するが、その料金が低く抑えられており、太陽光発電装置などを設置するコストが相対的に高いからだ。

アナリストによると、同じ電力を発電するコストを比較すると、太陽光発電は従来の技術の8倍以上となり、1キロワット当たり4人民元(約56円)の補助が必要であるという。政府の補助金政策も遅れている。

一方、中国の太陽光発電装置メーカーが生産している太陽光発電装置の総発電量は、ドイツを抜き世界1位となっている。つまり、中国で生産した太陽光発電装置は、そのほとんどを輸出しているのである。

04年にドイツ政府が補助金政策を発表するや、たちまち中国製の太陽光発電装置を輸出するようになった。当初太陽光発電装置の粗利は30%もあったといわれており、繊維・雑貨を中心とする輸出業者などがこの業界に一斉に参入した。07年に200社であった太陽光発電装置メーカーは、08年には400社にもなった。

ところが、ドイツの需要が激減し、08年にはこれまで急増していたスペインの需要も落ち込んだ。全世界の太陽光発電装置市場の70%を占める欧州で相次ぎ需要が減退したことで08年秋から市場の伸びが止まっている。

業界第3位で中国メーカーのサンテックパワーは逆に、補助金政策が復活した日本市場に参入することを表明している。


政府の補助がある風力発電事業に中国メーカーが殺到
太陽光発電に対して、風力発電は中国の国内市場が大きいのが特徴。
05年に中国国家発展委員会は風力発電所建設計画を打ち出し、風力発電で発生した電力は中国政府が買い上げる政策を発表した。これによって、中国での風力の発電量を10年までに5ギガ(ギガは10億)ワットに、20年までに30ギガワットにするという計画。実際、2005年に1.2ギガワットであった風力による発電量は、06年が2.6ギガワット、07年には6.0ギガワットへと急増してい。

この市場を狙ったのは、ます海外勢であった。デンマークVestas社、ドイツNordex社、スペインGamesa社などは技術を売り込むべく中国に進出した。インドに主力工場があるデンマークSuzlon社は、天津に25万平方メートルの風力発電装置の工場を建設した。遅れて中国メーカーも参入。04年には中国国内市場における中国メーカーのシェアは20%程度であったが、合弁会社を含めると07年には50%を超えた。中国の風力発電機メーカーは、現在25社あるが、さらに40〜50社程度が新規参入をうかがっているという。

中国の風力発電施設に風力発電機を納入するためには、付帯施設の送電線の建設も必要。また発電施設は全てを国営企業が運営しているため、発電機の選定に当たってはナショナリズムの台頭もあり国内メーカーを優遇する。国内メーカーの発電機には、購入のために大手電力会社の融資が付いている場合もある。

したがって、中国の国内市場における風力発電機メーカーのシェア上位企業には世界的に名を知られていない中国メーカーがランクインしている。07年市場では、全世界市場で16.7%のシェアを持ち第2位の米GEは、中国市場では8.3%のシェアにとどまり、順位は国内メーカー2社より低い5位に位置している。


政府は外国メーカーに対して、部品のうち70%は国産部品を使うという条件を設けているのも外資系メーカーの参入障壁となっている。
風力発電機の部品は1万点にもおよび、戦略的な部品調達システムを構築する必要があるが、数が足りず、18カ月待ちとなっている基幹部品もある。


エコビジネスも中国の典型的な過剰設備による競争に
ただし、国内で好調な中国の風力発電機メーカーも、必ずしも成功しているわけではない。中国最大手のGoldwind社はまだ上場を果たしておらず、ゴールドマンサックスと上場の話し合いの段階だ。設備過剰による利益の減少もあり、今後2〜3年で風力発電機メーカーの統廃合は必至という。欧米の投資会社は、むしろリスクが高いビジネスだと指摘している。英石油大手BPもアジアの風力発電事業を見直しでおり、内モンゴルでの合弁事業からの撤退を決めたという報道もある。

そもそも中国の電力供給量は過剰状態にある。中国の電力消費量は減少に転じているに対し、原子力発電所を含む向こう数年の長大型発電プラント建設計画が目白押しにある。今後景気が回復したとしても供給過剰は避けられない。


中国で特徴的に感じるのだが、何かが良いとなると一斉に集まってきて同じ事を始めるので、何でもが過剰になってしまい、激しい競争になっている。競争も必要だが、無駄に多い競争は、発展のために障害になっているような気がしてならない。

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